マーケティング的受験戦略論①

今回から、2回にわたってComS独自の大学受験戦略理論を書きます。主な流れとしては、まず一般的な学習塾や予備校がどのような仕組みになっているかを説明し、ComSの特徴をざっくりと示すことで、どのように指導の方針が違っているかを明確にします。そのうえで、さらに詳しくシステムを説明することで、ComSの受験指導の価値をご理解いただきたいと思っています。

 

日本は教育熱心な国です。大手塾や予備校の費用は年間100万ぐらいかかる場合もありますし、大学の費用も海外の先進国と比べて高く、アメリカに次ぐ水準となっています。それでも多くの人が大学に通うのは、大卒の生涯獲得賃金が高卒に比べて大幅に高いからでしょう。

 

しかし、その教育熱心な姿勢が教育事業の質を向上させない要因のひとつになっていると私は考えています。

高校生たちは藁にもすがる思いで塾に頼ります。近年は特に、大学受験の難化が進み、学校やネットで焦りを助長するような言葉が増えています。焦って自分で調べようにも、情報が多すぎて何を調べたら良いのか分からない。だから塾に行ってとりあえず安心したくなるのは当然です。

個人塾を別として、そんな困っている学生たちを食い物にするように大手塾や予備校は高い学費を請求してきます。そんなことをしているからサービスの質が向上しません。すべての予備校などがダメというわけではありません。

ComSはなぜ授業をしないのか?という記事でも書きましたが、高品質の授業はスタディサプリでも受けられる時代です。でも、人生がかかった試練に対してネットのみというのも不安ですし、あまりの安さに信用できないと考える人も多いのは事実です。私としてもスタサプの授業は信頼していますが、指導や管理に関しては信用していません。

話がスタサプにそれましたが、塾はいわゆる「売り手市場」のような状態で、困っている学生は高いお金を払うことになる場面が多い。では、塾は何を売っているビジネスでしょうか?学生やその保護者の方たちは何を買っているのでしょうか?

ほとんどの塾が「授業」と答え、また学生たちもそれを買っていると思っているでしょう。日本人は学校教育のなかで授業を受けて受動的に学習する場面が圧倒的に多いです。そこから、多くの人の考えとして「勉強=授業」と思いがちです。個人塾の場合は、授業以外のサービスがないのが普通なくらいです。

では、「授業」を受ければ大学に合格しますか?

ここが重要なポイントです。「授業」を受けるだけで合格するなら誰も苦労しないです。にもかかわらず塾は「授業」を売り、学生は「授業」を買う。

このような、売り手が売りたいものを売ることをマーケティングでは「プロダクト・アウト」といい、日本は戦後の経済成長の結果から、非常にプロダクト・アウト気質が強いです。行き過ぎたプロダクト・アウトでは「良いものを作れば売れる」と考えて、買い手が必要と思っているかを度外視してしまうことがあります。「良い授業さえ提供すれば学生が満足する」と考えるような状況は、まさしくプロダクト・アウトです。極端な言い方ですが、基本的に塾は「学生に授業を売るビジネス」であって、合格するか否かは重要ではないのです。

 

冷静になって考えてみてください。大学受験の問題は大学によって異なり、配点や科目もバラバラです。どんな大学を志す人にも万能な授業などあるはずがないです。大切なのは学生を満足させることではなく大学に合格する可能性を限りなく高めることではないでしょうか。

 

私は模試の結果を信用していません。模試で判定が良いからと言って、入試の対策をしていないと受かりません。分かりやすい例で言うと、マーク模試でA判定が出ても私立大学志望者にとっては全く信用できません。その模試において相対的に成績が良かったにすぎず、その大学の入試にフィットしなければ合格できません。当然ですが、学生たちが参考にすべきは模試ではなく志望校の入試です。

このことから、私は大学受験は「プロダクト・アウト」ではなく「マーケット・イン」でなければいけないと考えています。「マーケット・イン」とは、「買い手が欲しいものを提供しようとする」ことです。顧客のニーズを軸にビジネスを考えるという、マーケティングの基本です。

大学受験に置き換えて考えてみます。大学受験においてターゲットは何か。それは当然、目指す大学です。つまり、大学が欲しいと考える人材に学生が成長することが目的なのです。「プロダクト・アウト」では買い手は学生と考えられていましたが、本当は大学が買い手であり、塾にできることは「学生を大学に選んでもらえる人材に成長させる手助けをすること」ではないでしょうか。

ターゲットがズレたビジネスは大抵、アプローチもズレてしまいます。「大学」に認めてもらうために必要な力を伸ばすことと、「学生」に満足してもらえる授業を提供すること。全く違いますよね。だからComSでは過去問を徹底的に解いて分析し、個々に応じて伸ばすべきポイントを最大限伸ばせるようなシステムにしています。

これがComSのマーケティング的受験戦略の根幹です。

塾というカテゴリーで見ると他塾と同じですが、根本的に考え方が違います。「志望校に向けて頑張ろう!」という言葉を塾で言われても、過去問を解くことを重要視していない塾は注意したほうが良いでしょう。

次回は、このマーケティング的受験戦略をどのように学習に組み込むかという話です。学習という実践においても、他にはない独自の方法によって様々なものを分析し、合格の可能性を高めていけるシステムになっています。お楽しみに。

 

本日のポイント

・日本の塾は「授業」を売っている
・大学受験で大事なのは「授業」を買うことではなく、大学に自分をかわせること
・過去問から自分と大学を分析して戦略を立てないと、誤った方向に進むかもしれない