学校で先生に「今日中に復習しておくように」と言われた経験、誰もがあるのではないでしょうか。
忘れないうちに復習をする。一見、理想的に思えますが、私は正しい復習だとは思えません。
今回は脳科学的な根拠から説明し、理想的な復習のタイミングや方法をお伝えしようと思います。
まず、復習とは何のためにやるか。当然、学んだことを忘れないようにするためです。授業で学んだことを忘れないうちに、もう一度問題を解いておくというのは一般的な復習の考え方です。
しかし、学校で解説してもらった問題を家でもう一度解いて、解けない人がいるでしょうか?もちろん、様々な要因からその日のことを忘れてしまう人もいます。けれども、大学受験をしようという学生が、その日に学んだことを忘れるようならば、率直に申し上げて大学進学はあきらめたほうがいいと思います。常日頃から生徒に伝えていますが、大学進学したからといって安定した安心の職業につける時代は終わりました。昔と違って、世の中には大卒の経歴を持つ人が多くなったため、大卒自体に全く価値はないと言えるでしょう。まして、社会的にAIの導入が進めば、肩書だけの人材を雇う会社は生き残れません。AI時代に必要なことについては、また後日書こうと思います。要するに、勉強が心底苦手ならば、大学進学することが良い選択とは限らないということです。
話を戻すと、その日のうちに復習しても形だけになることが多いです。ノートや教科書を開き、もう一度形だけ問題を解いてできた気になる。私としては、それでできた気になるくらいならやらないほうが良いとすら思います。
日本の大学受験はシンプルに考えると「どれだけ知識を蓄えたか競うゲーム」のようなものです。つまり、「理解できたかどうか」よりも、「学んだことを覚えているか」が重要です。その観点から、こうした自己満足で終わる復習には何の意味もないと思っています。
では、理想的な復習は何か。ポーランドの研究者である、ピョートル・ウォズニアック氏は以下のような復習感覚が理想だと述べています。
1回目の復習 1日後
2回目の復習 7日後
3回目の復習 16日後
4回目の復習 35日後
とは言え、この間隔を正確に守るのは非常に難しいです。そこで、私は「一週間後に復習しよう」というふうに生徒に指導しています。一週間もすれば理解が及んでいないものは忘れますし、逆に忘れたものを思い出すほうが脳は強く記憶します。単語テストなどで間違えた問題ほど後々になって完璧に覚えられ、逆にいつも正解していた問題ほど本番で忘れてしまうのも、似たような脳の仕組みから起きています。
「でも、一週間も経てば問題を解けなかったり全部忘れてしまう」という生徒もいます。そこで、私は「ながら復習」を勧めています。
「ながら復習」とは、お風呂に入りながらやご飯を食べながら、その日に学んだことを頭の中で反復する復習法です。多くの人の復習の間違いは、「机に向かって教科書とノートを開くこと」にあります。というのも、教科書やノートには学んだことが当然書かれています。ただそれを眺めるだけで、脳に記憶されるはずがありません。私は「トリガー(引き金)」と呼んでいますが、人の記憶は引き金のようなきっかけによって思い出されます。トリガーだらけの教科書やノートで復習しても、実際の本番ではトリガーは非常に少ないので思い出せないのです。だからこそ、教科書やノートがない状態で必死に思い出して整理してみるのです。そうすれば、分かっていないことや抜けてしまった内容を把握できますし、必死に思い出そうと苦しむことで、より強固に脳に記憶されるのです。
基本的に、学力は学習量に比例します。「学校の勉強だけで成績が良い人がいる」と思うかもしれないのですが、彼らは脳内で何度も反復を行っているのです。つまり、記録力勝負の受験においては、学習時間や机に向かっている時間ではなく、「脳内でどれだけ反復したか」が非常に重要なのです。もちろん、能力によってよりポイントを押さえて覚えられる人もいますが、それは一般人が脳内の反復量で補える程度のものが多いです。学力が上がらない人は、単純にその学習に対しての思考量が足りていないだけです。机に向かうことや教科書とノートを開くことにこだわらずに、様々な場面で学んだことを思い返す習慣をつけるように意識しましょう。
今日のポイント
・復習で、すぐに解きなおしても意味がない
・忘れかけたぐらいの時の方が効果的
・形だけの復習でなく、「ながら復習」で脳の思考量を増やす